ダイオキシン

ダイオキシンとは

最近、新聞やテレビなどでダイオキシンによる環境汚染が報道されています。 ダイオキシンには多くの類縁体や同族体が存在しますが、一般的には最も毒性の高い2,3,7,8-四塩化ダイオキシンの事をいいます。 ベトナム戦争時に大量に散布された枯れ葉剤に不純物として混入していたために汚染をもたらし、深刻な問題となりました。 このダイオキシンの汚染が、私たちの日常生活に徐々に広がっていたのです。
現在はポリ塩化ダイオキシンおよびポリ塩化ジベンゾフランのほか、コプラナ-ポリ塩化ビフェニル(コプラナ-PCB)も併せて「ダイオキシン類」と呼び、毒性の高い類縁体には2,3,7,8-四塩化ダイオキシンに換算する毒性等価係数(TEF)が与えられています。

発生源

現在、我が国におけるダイオキシン類の主な発生源はゴミ焼却場、産業廃棄物焼却場、金属精錬工場、塩化ビニール製造工場などと考えられています。
年間の発生量は、平成9年度で2,3,7,8-四塩化ダイオキシンに換算して6kg、平成10年度で3kg程度と推測されていますが、正確な発生量は不明です。 極めて微量のダイオキシン類はあらゆる燃焼・加熱反応の際に生成するものと考えられています。 そして塩素源となる物質がある場合にはその生成量は飛躍的に多くなります。 これまでの報告によれば、塩化ビニールなどの塩素を含有するプラスチック系廃棄物の寄与が大きいと考えられていますが、生ゴミ中の塩化ナトリウムもゴミ焼却時に塩素源となりうる可能性が報告されています。

健康に与える影響

ダイオキシン類の生体影響の特徴は、急性毒性と催奇形性などの遺伝毒性が大変強いということです。 その急性毒性はダイオキシン類に最も強い感受性を示すモルモットで2,3,7,8-四塩化ダイオキシンの半数致死量が体重1kg当たり0.6μ(マイクロ:10-6)gという極めて強いものです。 しかし、生物種によって急性毒性値は大きく異なることが知られており、ヒトで急性毒性が見られたような事例はこれまでに、枯れ葉剤製造工場労働者が被爆した例や化学工場の爆発により近隣住民が多量のダイオキシン類を浴びた事故などが報告されています。 また、PCBが食用油に混入して起きたカネミ油症や韓国でのYu-Chen事件も高毒性のコプラナPCBやPCBの不純物であるポリ塩化ジベンゾフランによる急性中毒と考えられています。
一方、動物実験ではダイオキシン類は微量であっても長期ばくろにより、強い催奇形性、胎児毒性、免疫機能異常、ホルモン異常および発ガン性などの多様な毒性が報告されています。 さらに、最近問題となった内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の中でも、最も強い作用物質として考えられているのがダイオキシン類です。 日常生活での食事や授乳などにより、長期間にわたって微量な汚染を受け続けた場合の影響が懸念されており、次世代への影響が大きな社会問題となっています。

排出規制と現状

我が国では、ゴミ焼却場や産業廃棄物焼却場の排出濃度の規制を平成9年12月から行い、高毒性のポリ塩化ダイオキシン7種、ポリ塩化ジベンゾフラン10種を規制対象物質としました。 さらに、平成12年1月に施行されたダイオキシン類対策特別措置法によりきびしい規制が行われ、コプラナPCB 12種も加えられました。
平成11年度までの調査結果では、緊急対策値である80 ng-TEQ/m3N (排気ガス1立方メートル当たり2,3,7,8-四塩化ダイオキシンに換算した値が80ナノ(10-9)グラム)を上回ったゴミ焼却場は改修が行われたり、操業が中止され、緊急対策値を超えるような施設はほとんど認められませんでした。 しかし、すべての焼却施設が恒久対策の目標値である0.1 ng-TEQ/m3N以下に達するには20年以上の歳月と多額の費用が必要となります。 下表には参考としてダイオキシン類の排出規制値を示します。
  平成12年に施行されたダイオキシン類対策特別措置法でダイオキシン類の耐容一日摂取量は4 pg-TEQ/kg体重/day (体重1kg当たり1日に2,3,7,8-四塩化ダイオキシンに換算した値が4ピコ(10-12)グラム)以下と設定されました。 現在の日常生活による日本人の平均的ダイオキシン類のばくろ量は約2.1 pg-TEQ/kg体重/dayと報告されており、かろうじて下回っていますが、世界保健機構(WHO)の指針値である1~4 pg-TEQ/kg体重/dayと比較するとまだ十分に低い値とは言えません。 しかし、1980年代と比較すると徐々にですが低下している傾向にはあります。 今後も環境や食品などのモニタリング調査が重要であると考えられます。

種類 施設規模 新設施設基準 既設施設基準
H9.12以降 H10.11迄 H10.12-H14.11 H14.12以降
廃棄物焼却炉 4 t/h以上 0.1 ngTEQ/m3N 基準の適用を猶予 80 ngTEQ/m3N 1 ngTEQ/m3N
2-4 t/h 1 ngTEQ/m3N 5 ngTEQ/m3N
200 kg-2t/h 5 ngTEQ/m3N 10 ngTEQ/m3N
製鋼用電気炉 変圧器の定格容量
が1,000 kV以上
0.5 ngTEQ/m3N 10 ngTEQ/m3N